
そんな株を再びこんもりと咲かせるために役立つのが、園芸でいう「切り戻し」という手入れの技法です。
ただ、いざ行おうとすると、どこを切ればよいのか、時期はいつが正解なのか、摘心や間引きと何が違うのかと、迷う場面も少なくありません。
この記事では、切り戻しの意味と役割から、切る位置の見極め方、草花や花木ごとの手順、ペチュニアやビオラといった人気植物別のコツ、最適な時期、失敗を防ぐ注意点までを、園芸のプロの視点でわかりやすくまとめました。
切り戻し後の水やりや肥料の与え方、挿し木への活用といったよくある疑問にもお答えします。
庭やベランダの植物を長く美しく楽しみたい方は、ぜひ最後までご覧ください。
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切り戻しとは?園芸での意味と役割

まずは言葉の意味と、よく混同される摘心・間引きとの違いから整理していきます。
切り戻しの意味と役割
草花は咲き進むにつれて茎が間延びし、株元がさびしくなったり花数が減ったりします。
そこで茎を切り詰めると、残した部分の脇芽が動き出し、ふたたびこんもりとした姿へ戻っていきます。
おもな役割は、次の三つです。
- ●乱れた草姿を整える
- ●風通しをよくして蒸れや病害虫を防ぐ
- ●新しい花芽をうながし、開花期間を延ばす
一度植えたら終わりではなく、生育に合わせてくり返し切り戻すことで、植物は本来の力を長く発揮できます。
切り戻しと摘心(ピンチ)の違い
先端を止めることで、その下の脇芽が伸びはじめ、枝数の多いボリュームのある株に育ちます。
一方の切り戻しは、ある程度育って花が一段落した株に対し、茎を大きく短く切り詰める点が異なります。
つまり摘心は「これから茂らせるための準備」、切り戻しは「乱れた株を仕立て直すリセット」と整理するとわかりやすいでしょう。
摘み取る量も、摘心はごく先端のみ、切り戻しは全体の三分の一から半分ほどと、はっきり差があります。
切り戻しと間引き剪定の違い
切る対象は不要な枝そのもので、株の高さやボリュームを大きく変えない点が特徴といえます。
対して切り戻しは、枝の途中で切り詰めて全体を一回り小さく仕立て直し、新芽の更新をうながす作業になります。
庭木では、この二つを組み合わせて使うことも珍しくありません。
たとえば内側の混み合った枝を間引きで抜いたうえで、外へ伸びすぎた枝を切り戻すと、樹形が整い風通しも改善します。
ここまでの三つの違いを、表にまとめます。
| 項目 | 切り戻し | 摘心(ピンチ) | 間引き剪定 |
|---|---|---|---|
| おもな目的 | 乱れた株の仕立て直し・開花促進 | 枝数を増やすための準備 | 風通しと日当たりの改善 |
| 切る場所 | 茎や枝の途中(脇芽の上) | 茎の先端のみ | 不要な枝を枝元から |
| 適した時期 | 花後や生育中の随時 | 生育の初期 | 枝が込み合ったとき |
| 切る量 | 全体の1/3〜1/2 | 先端を少しだけ | 選んだ枝を抜き取る |
切り戻しはどこを切る?基本のやり方

切る場所を誤ると、新芽がうまく出ずに株を弱らせてしまう原因にもなりかねません。
ここでは基本となる切る位置と、草花・庭木それぞれの手順を見ていきます。
脇芽の上で切る
脇芽とは、葉の付け根にある小さな芽のことで、ここから新しい枝や花芽が伸びてきます。
脇芽の五ミリほど上を目安に、芽を傷つけないよう切り取ります。
切り口が芽から離れすぎると、残った茎が枯れ込んでしまう場合があるため注意が必要です。
逆に芽すれすれで切ると、大事な脇芽まで傷めてしまう恐れがあります。
外側を向いた芽の上で切ると、新しい枝が外へ広がり、風通しのよい開いた株姿に仕立てやすくなります。
切る位置の見極め方
基本は、葉や脇芽が十分に残る位置を選ぶことが前提となります。
葉を一枚も残さず茎だけにしてしまうと、光合成ができず再生が遅れるため、避けたほうが安全です。
草花であれば全体の三分の一から半分、生育旺盛な株なら半分ほどを思い切って切り詰めても問題ありません。
緑の葉が残っているうちに作業するのがコツで、茎が茶色く木質化した部分まで切り込むと芽吹きにくくなる点には気をつけましょう。
草花の手順
まず、枯れた花やしおれた葉を取り除いて株全体を見渡します。
次に、伸びすぎた茎を株の三分の一から半分ほどの高さで、脇芽の上を意識しながら切りそろえていきます。
このとき株の中心が低く、外側がやや高くなるよう、こんもりとドーム状を意識すると仕上がりがきれいです。
切り終えたら、活力をつけるために水と肥料を補い、明るい日陰で数日休ませると安心でしょう。
一週間から十日ほどで新芽が動きはじめ、二〜三週間後には再び花を咲かせてくれます。
花木・庭木の手順
枝の途中にある外向きの芽や、元気な脇枝の上を選んで切り詰めていきます。
太い枝を切る場合は、切り口から雑菌が入らないよう、癒合剤(ゆごうざい)を塗っておくと安心です。
庭木では一度に全体を強く切るのではなく、樹形を見ながら数回に分けて整えると失敗が減ります。
ただし樹種によって花芽のつく時期が異なるため、切る時期を誤ると翌年に花が咲かないこともあります。
高木の枝おろしや手の届かない場所の作業については、無理をせず専門業者に任せるのが安全な選択でしょう。
植物別の切り戻しポイント

ここでは、家庭でよく育てられる代表的な植物ごとに、押さえておきたいポイントを紹介します。
ペチュニア・サフィニア
咲き進むと枝先にばかり花がつき、株元がさびしくなって全体が間延びし、株も蒸れやすくなります。
そんな状態になったら、緑の葉が残っているうちに思い切って刈り込むのが回復への近道です。
切り戻しの手順は、次のとおりです。
- ●株全体を半分から三分の一ほどの高さまで刈り込む
- ●鉢からはみ出した枝は、鉢の内側の縁に沿わせるイメージで切りそろえる
- ●各枝とも葉や脇芽が数枚残る位置で切る(茎だけにしない)
- ●お礼肥として液体肥料や置肥を施す
- ●土が乾いたらたっぷり水を与え、明るい場所で回復を待つ
葉を一枚も残さず茎だけにすると芽吹きが遅れてしまうため、緑の部分を必ず残すのがいちばんのコツです。
順調にいけば二〜三週間で新しい芽が伸び、ふたたび満開の姿が戻ってきます。
時期としては梅雨に入る前後が好機で、蒸れを防ぎながら夏を越させれば、秋にもう一度花を楽しめるでしょう。
ビオラ・パンジー
花がら摘みをこまめに続けても、真冬を越えるころには茎が伸びて姿が乱れてきます。
気温が上がりはじめる二月下旬から三月ごろに、一度すっきりと整えるのがおすすめです。
切り戻しの手順は、次のとおりです。
- ●株全体の三分の一ほどを目安に切り戻す
- ●伸びすぎた茎を、わき芽や元気な葉の上で切る
- ●枯れ葉や黄ばんだ葉、咲き終わった花がらも同時に取り除く
- ●切ったあとは薄めの液体肥料を与えて新芽を後押しする
寒さの厳しい真冬は生育がほぼ止まっているため、強い切り戻しは春の気配を感じてからのほうが安心です。
こうしてひと手間かけておくと、春には花数が増えてボリュームのある株に育ちます。
マリーゴールド
梅雨の前後に一度切り戻しておくと、蒸れを防ぎつつ秋にもう一度しっかり咲かせられます。
切り戻しの手順は、次のとおりです。
- ●草丈の半分ほどを目安に切り戻す
- ●わき芽の上を選んで、各枝を切りそろえる
- ●咲き終わった花がらをこまめに摘み取る
- ●切り戻し後は緩効性肥料を株元に施す
花がらを残すと種に栄養を取られて開花が止まりやすいため、摘み取りとセットで行うのがコツといえます。
ひと回り小さく整えておけば、秋風が吹くころにふたたび鮮やかな花が戻ってきます。
ナスなどの野菜
真夏になると株が疲れて実つきや味が落ちるため、七月下旬から八月上旬ごろに株を若返らせます。
更新剪定の手順は、次のとおりです。
- ●それぞれの枝を、三分の一から半分ほどの長さに切り詰める
- ●外側を向いた芽の上で切り、新しい枝の伸びをうながす
- ●株の周囲にスコップを入れ、根を切る「根切り」をあわせて行う
- ●お礼肥として追肥を施し、たっぷりと水を与える
こうして枝と根を一緒に若返らせると、新しい根と枝が伸び、秋にはやわらかい「秋ナス」を味わえます。
切り戻し後しばらくは実つきが落ち着くものの、回復すれば再び収穫が楽しめるでしょう。
観葉植物
育つうちに茎やつるが間延びし、下葉が落ちて見た目が貧弱になりがちです。
切り戻しの手順は、次のとおりです。
- ●間延びした茎やつるを、節(ふし)の少し上で切る
- ●バランスを見ながら、全体の三分の一ほどを目安に整える
- ●切り口から出る樹液は、布などで軽く拭き取る
- ●切ったあとは明るい日陰に置き、土が乾いたら水を与える
節の上で切ると、その下から新しい芽が出てこんもりと茂ります。
切り取った茎は挿し木に利用できるので、株をふやしたいときにも役立ちます。
ただし生育が鈍る冬は避け、気温の上がる春から初夏に行うのが失敗を防ぐポイントです。
切り戻しに最適な時期

植物の種類ごとに、適した季節の目安を押さえておきましょう。
草花は梅雨前と夏越し後
湿気がこもる前に枝を整えておけば、蒸れによる傷みや病気をぐっと減らせます。
さらに夏の暑さで株が乱れたあと、九月の涼しくなりはじめる時期にもう一度切り戻すと、秋にきれいな花が戻ります。
真夏の猛暑のさなかは株が弱りやすいため、強い切り戻しは避けたほうが無難でしょう。
花木は花が終わった直後
これらの花木は、夏のあいだに翌年の花芽をつくる性質があります。
そのため花後すぐに切ればよいものの、夏以降に切ると翌年の花芽まで落としてしまいかねません。
アジサイなら花が終わる七月ごろまで、ツツジ類なら花後一か月以内を目安にすると安心です。
観葉植物は春から初夏
気温が二十度を上回り、植物が活発に育つ時期なら、切り口の回復も新芽の動きも早くなります。
反対に、生育が止まる秋から冬の切り戻しは、株に負担がかかりやすいため控えめにします。
どうしても冬に整えたい場合は、枯れた葉や明らかに伸びすぎた枝だけにとどめるのが賢明でしょう。
野菜(更新剪定)は真夏前
盛夏を迎える前に切り戻しと根切りをしておくと、秋までに株が再び元気を取り戻します。
あまり遅い時期に行うと、回復が間に合わず秋の収穫につながりにくくなる点には注意が必要です。
気温や地域差もあるため、お住まいの地域の家庭菜園情報もあわせて参考にするとよいでしょう。
切り戻しをする時の注意点

最後に、失敗を防ぐために押さえておきたい注意点を整理します。
切りすぎて株を弱らせない
葉をほとんど残さず茎だけにすると、光合成ができずに株が体力を失い、最悪の場合そのまま枯れてしまいます。
目安として、葉や脇芽を必ず数枚は残し、緑の部分を手がかりに切る位置を決めるよう心がけましょう。
弱った株や植え付け直後の株は、回復力が落ちているため切り戻しを控えるのが無難です。
清潔なハサミで病気を防ぐ
切れ味の悪い刃は切り口をつぶし、そこから雑菌が入って病気の原因になりかねません。
また、病気の株を切ったハサミをそのまま別の株に使うと、菌やウイルスを広げてしまう恐れがあります。
作業の前後やひと株ごとに、刃をアルコールや熱湯で消毒しておくと安心です。
切り口の小さい草花ではそこまで神経
切り戻し後の水やりと肥料を忘れない
土の表面が乾いたら鉢底から流れ出るくらいたっぷりと水を与え、株の回復を支えましょう。
あわせて、緩効性肥料や液体肥料を「お礼肥」として施すと、新芽の生育がぐんとよくなります。
ただし切り戻し直後の弱った株に濃い肥料を一度に与えると、根を傷める原因になるため避けてください。
肥料は規定よりやや薄めから始め、株の様子を見ながら少しずつ調整するのが安全です。
真夏や真冬の強剪定は避ける
猛暑のさなかや厳寒期は、植物の生育が鈍り、切り口の回復にも時間がかかります。
この時期に大きく切り戻すと、回復しきれずに株が傷んだり枯れたりする危険が高まります。
どうしても乱れが気になるときは、枯れ枝や伸びすぎた部分を軽く整える程度にとどめておきましょう。
本格的な切り戻しは、春や秋など気候の穏やかな時期まで待つのが賢明です。
切り戻しに関するよくある質問

| 切り戻しとはどういうことですか? |
|
| 切り戻しとは、伸びすぎた茎や枝を途中で短く切り詰め、株の形を整えながら新しい芽や花をうながす手入れのことです。 花が減ってきた草花や、間延びした観葉植物をふたたびこんもりと仕立て直す目的で行います。 単に短くするだけでなく、脇芽の上で切ることで新しい枝の発生をうながす点が、切り戻しの大きな特徴といえます。 |
| 切り戻しをする時の注意点は何ですか? |
|
| もっとも大切なのは、葉や脇芽を残して切りすぎないことです。 葉をすべて落とすと光合成ができず、株が弱ってしまいます。 あわせて、清潔でよく切れるハサミを使い、切り口から病気が入るのを防ぐことも欠かせません。 さらに、切り戻し後は水やりと適度な肥料で株の回復を助け、真夏や真冬の強い切り戻しは避けるのが安心です。 |
| 切り戻した枝は挿し木に使えますか? |
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| 健康な枝であれば、切り戻しで出た枝を挿し木に活用できます。 ペチュニアやサフィニア、ポトスやパキラといった植物は、挿し木でふやしやすい代表例です。 方法としては、切り取った枝を一〇センチほどに整え、下のほうの葉を取り除いてから、清潔な用土に挿します。 発根までは土を乾かさないよう管理し、明るい日陰に置いておくと根が出やすくなります。 ただし病気の株や弱った枝はうまく発根しにくいため、勢いのある元気な枝を選ぶのが成功への近道でしょう。 |
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とはいえ、背の高い庭木や生育旺盛な植木の切り戻し剪定となると、時期の見極めや切る位置の判断、安全な作業に専門的な知識と手間が求められます。
切る量を誤って花が咲かなくなったり、無理な高所作業でけがをしたりするリスクを考えると、プロに任せる安心感は大きいといえます。
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